3-1 血圧異常

1.身体検査基準

収縮期血圧160㎜Hg未満、拡張期血圧が95㎜Hg未満であり、かつ、自覚症状を伴う起立性低血圧がないこと。

2.不適合状態

2-1
高血圧

2-2
自覚症状を伴う起立性低血圧

3.検査方法及び検査上の注意

3-1
血圧値が基準値を超える場合には、必要に応じ繰り返して測定し、又は24時間血圧計を使用して測定し、慎重に判断すること。

3-2
降圧薬の使用の有無を問診により確認するとともに、服用中の場合はその副作用について十分な検討をすること。

3-3
自覚症状を伴う起立性低血圧の疑いがある場合は起立耐性検査を実施すること。

4.評価上の注意

4-1
血圧値について、検査当日中に基準値内の血圧が得られない時は、1週間以内に再度測定し、基準値内にあることを確認すること。この場合、身体的所見等を総合的に評価し、異常のないことを確認すれば、適合とする。

4-2
いわゆる白衣高血圧(普段は高血圧ではないが診察室において高血圧となる現象)の可能性がある場合は、24時間血圧計を使用し、平均135/80mmHg未満であり、かつ、早朝及び夜間高血圧が否定されれば適合とする。

4-3
次に掲げる降圧薬を使用する場合であって、降圧薬の使用により血圧値が基準値を超えず、かつ、一定用量が維持されてから2週間を経過した後使用降圧薬による副作用が認められないときは、適合とする。
(1)降圧利尿薬(抗アルドステロン薬を含む。)
(2)カルシウム拮抗薬
(3)β-遮断薬
(4)ACE阻害薬
(5)AⅡ受容体拮抗薬

4-4
降圧薬の減量の際は、少なくとも1ヶ月間は症状の有無、最低2週間に1度の血圧測定等の経過観察を行い、安定した血圧値が得られていることを確認すること。

4-5
逆白衣高血圧(診察時は血圧値が正常範囲内であるが、自由行動下で血圧高値となるもの)の可能性についても十分に注意すること。

4-6
治療を必要とすると判断される高血圧の場合は、治療について説明を十分に行い、血圧管理がなされた後航空業務に従事することが望ましい。

4-7
自覚症状を伴う起立性低血圧は、仰臥位又は座位から立位への体位変換後3分以内に収縮期血圧が20mmHg以上低下する、収縮期血圧の絶対値が90mmHg未満に低下する、又は拡張期血圧が10mmHg以上低下することが認められた場合は、不適合とする。

5.備考

5-1
上記4-3に示した降圧薬以外の降圧薬を使用している者であって経過良好な者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、治療内容を含む臨床経過及び血液生化学検査結果、安静時心電図、心臓超音波検査及び眼底所見等の所見を付して申請すること。

5-2
上記5-1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

3-2 心筋障害

1.身体検査基準

心筋障害又はその徴候がないこと。

2.不適合状態

2-1
心筋症又はその疑いのあるもの

2-2
心筋炎又はその既往歴のあるもの

3.検査方法及び検査上の注意

3-1
安静時心電図検査は、下記のとおり実施すること。ただし、問診等により必要 を認めた場合は、下記以外の検査時にも心電図検査を行い、十分に検討すること。

[第1種]

3-2
初回の航空身体検査時及び30歳に達した後の最初の航空身体検査時に実施し、その後40歳に達するまでの間は、前回の検査から2年に1回の間隔で実施し、40歳に達した後は、前回の検査から1年に1回の間隔で実施すること。ただし、30歳以上40歳未満、かつ、有効期間が1年未満の者は、前回の検査から2年を経過する直前の身体検査時に実施し、40歳以上、かつ、有効期間が1年未満の者は、前回の検査から1年を経過する直前の航空身体検査時に実施すること。

[第2種]

3-3
自家用操縦士の資格についての技能証明のみを有する者にあっては、初回の航空身体検査時及び30歳に達した後の最初の航空身体検査時に実施し、その後40歳に達するまでの間は、前回の検査から5年に1回の間隔で実施し、40歳に達した後は最初の航空身体検査時に実施し、その後は前回の検査から2年に1回の間隔で実施し、50歳に達した後は、前回の検査から1年に1回の間隔で実施すること。ただし、30歳以上40歳未満、かつ、有効期間が5年未満の者は前回の検査から5年を経過する直前の航空身体検査時に実施し、40歳以上50歳未満、かつ、有効期間が2年未満の者は前回の検査から2年を経過する直前の航空身体検査時に実施し、50歳以上、かつ、有効期間が1年未満の者は、前回の検査から1年を経過する直前の航空身体検査時に実施すること。

3-4
自家用操縦士以外の資格についての技能証明を有する者にあっては、初回の航空身体検査時及び30歳に達した後の最初の航空身体検査時に実施し、その後40歳に達するまでの間は、前回の検査から2年に1回の間隔で実施し、40歳に達した後は、前回の検査から1年に1回の間隔で実施すること。ただし、30歳以上40歳未満、かつ、有効期間が1年未満の者は、前回の検査から2年を経過する直前の身体検査時に実施し、40歳以上、かつ、有効期間が1年未満の者は、前回の検査から1年を経過する直前の航空身体検査時に実施すること。

4.評価上の注意

4-1
心筋障害は航空の安全を脅かす疾患であるため、心電図の判読に当たっては、必要に応じて専門医の診断により確認すること。

4-2
血液検査等で治癒が確認された心筋炎について、心臓超音波検査等で心機能に異常がない場合は、適合とする。

5.備考

5-1
上記2.不適合状態の者で経過良好な者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、臨床経過及び安静時心電図検査、心臓超音波検査(ドップラー法)、核医学検査等の結果を付して申請すること。

5-2
上記5-1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

3-3 冠動脈疾患

1.身体検査基準

冠動脈疾患又はその徴候がないこと。

2.不適合状態

2-1
心筋梗塞若しくは狭心症又はこれらの既往歴のあるもの

2-2
無症候性心筋虚血又はその既往歴のあるもの

2-3
冠動脈障害に対する治療歴のあるもの
(1)経皮経管冠動脈形成術(PCI)
(2)冠動脈バイパス術(CABG)
(3)その他

3.検査方法及び検査上の注意

3-1
安静時心電図検査は、3.循環器系及び脈管系3-2心筋障害、3.検査方法及び検査上の注意に準じる。

3-2
安静時心電図所見又は臨床所見上、上記不適合状態が疑われる場合は、安全性を考慮した上で、必要に応じ運動負荷心電図検査を行う。運動負荷心電図検査の判定が陽性である場合又は検査が困難な場合は、冠動脈CT検査又は核医学検査(タリウム-201若しくはテクネチウム-99mによる心筋シンチ検査又は心プール検査)を実施し、十分な検討を行うこと。

3-3
運動負荷心電図検査を行う場合、心拍数が年齢相当最大心拍数の85%以上になること。
年齢相当最大心拍数=(220-年齢)回/分

4.評価上の注意

4-1
冠動脈疾患は航空の安全を脅かす疾患であるため、心電図の判読に当たっては、必要に応じて循環器専門医の診断により確認すること。
4-2
運動負荷心電図及び核医学検査の判定については、循環器専門医の診断により確認すること。
4-3
安静時心電図所見及び臨床症状から上記2.不適合状態が疑われる場合で、運動負荷心電図で虚血を否定できない場合には、冠動脈CT検査で有意な狭窄が認められないか又は核医学検査で虚血所見が認められなければ適合とする。ただし、冠攣縮性狭心症の疑いのある場合は不適合とする。

5.備考

5-1
運動負荷心電図及び核医学検査において、心筋虚血を否定できない者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、臨床経過、安静時心電図、心臓超音波検査、運動負荷心電図検査、核医学検査及び必要に応じて心血管造影所見等を付して申請すること。

5-2
冠動脈疾患により、PCI又はCABG等の冠動脈血行再建術による治療歴を有する者であって、手術後に心事故(cardiacevent)を呈さず、手術から1年間を無症候に経過している者で、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、治療内容を含む臨床経過、安静時心電図、心臓超音波検査、運動負荷心電図検査、核医学検査、心血管造影所見等を付して申請すること。

5-3
上記5-1及び5-2の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

3-4 先天性心疾患

1.身体検査基準

航空業務に支障を来すおそれのある先天性心疾患がないこと。

2.不適合状態

2-1
チアノーゼ群又は遅発性チアノーゼ群のすべての先天性心脈管異常

2-2
先天性心脈管異常により治療歴のあるもの

3.検査方法及び検査上の注意

診察に当たっては、心雑音に注意し、必要に応じて超音波検査を実施すること。

4.評価上の注意

非チアノーゼ性心疾患については、専門医の診断により確認を行うこと。

5.備考

5-1
先天性心脈管異常の治療歴を有する者又は治療の必要がないと判断される者であって、航空業務に支障を来すおそれがないと認められる者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、安静時心電図及び心臓超音波検査結果、胸部レントゲン写真、自覚症状の有無、現症及び治療内容を含む臨床経過等を付して申請すること。

5-2
上記5-1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

3-5 後天性弁膜疾患

1.身体検査基準

航空業務に支障を来すおそれのある後天性弁膜疾患又はその既往歴がないこと。

2.不適合状態

2-1
大動脈弁狭窄症

2-2
大動脈弁閉鎖不全症

2-3
僧帽弁狭窄症

2-4
僧帽弁閉鎖不全症又は僧帽弁逸脱症候群

2-5
三尖弁閉鎖不全症

2-6
弁膜疾患の治療中又は治療歴のあるもの

3.検査方法及び検査上の注意

問診、身体所見、安静時心電図検査等から必要と考えられる場合は、心臓超音波検査を実施すること。

4.評価上の注意

4-1
上記2.不適合状態について、心臓超音波検査(ドップラー法)で重症度が
mild所見以内であり、かつ、航空業務に支障を来すおそれがない場合は適合とする。

4-2
僧帽弁逸脱については、自覚症状、心電図異常(T波、不整脈)がなければ適合とする。

5.備考

5-1
上記2.不適合状態の者であって経過良好な者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、臨床経過、安静時心電図検査及び心臓超音波検査(ドップラー法)等を付して申請すること。

5-2
上記5-1の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

3-6 心膜疾患

1.身体検査基準

航空業務に支障を来すおそれのある心膜の疾患がないこと。

2.不適合状態

心膜炎又はその既往歴のあるもの

3.検査方法及び検査上の注意

診察に当たっては、心膜摩擦音に注意すること。また、原因疾患(感染、リウマチ性、膠原病等)については、十分に検討を行うこと。

4.評価上の注意

血液検査等により、心膜炎の治癒が確認された後、心臓超音波検査等によって後遺症が認められない場合は、適合とする。

5.備考

3-7 心不全

1.身体検査基準

心不全又はその既往歴がないこと。

2.不適合状態

心不全又はその既往歴のあるもの

3.検査方法及び検査上の注意

心不全の疑いのあるものは、その原因疾患について慎重に診断すること。

4.評価上の注意

5.備考

3-8 調律異常

1.身体検査基準

航空業務に支障を来すおそれのある刺激生成又は興奮伝導の異常がないこと。

2.不適合状態

2-1
洞機能不全症候群

2-2
一過性若しくは持続性の上室頻拍又は心房粗細動又はその既往歴のあるもの

2-3
心室頻拍又は多源性心室期外収縮が頻発するもの

2-4
心室期外収縮のうち、連発を繰り返すもの又はRonTを示すもの

2-5
第2度房室ブロック(モビッツⅡ型)

2-6
完全房室ブロック

2-7
完全左脚ブロック

2-8
完全右脚ブロック

2-9
WPW症候群のうち、発作性頻拍を伴うもの又はその既往歴のあるもの

2-10
先天性QT延長症候群

2-11
ブルガダ症候群

2-12
その他心電図上、重大な心疾患を推定できるもの

2-13
人工心臓ペースメーカー又は植え込み型除細動器を装着しているもの

2-14
調律異常に対して侵襲的治療(カテーテル心筋焼灼術等)を行ったもの

3.検査方法及び検査上の注意

3-1
問診上、意識消失発作の既往等を十分に確認すること。

3-2
心電図上不整脈が認められた場合は、ホルター心電図等により確認すること。

3-3
徐脈を呈する者については、洞不全症候群の有無等について、十分な検討を行うこと。

4.評価上の注意

完全右脚ブロックについて、初めて評価を行う際には、臨床症状がなく、心臓超音波検査、ホルター心電図検査、冠動脈CT又は核医学検査等の結果、原因となる疾患のない場合は、適合とする。その後は、毎更新時に安静時心電図を確認し、経時的変化のないこと(PQ延長、QRS幅延長、軸偏位)を確認すること。ブルガダ症候群が疑われる場合は、循環器専門医によるリスク評価を厳格に実施すること。

5.備考

5-1
カテーテル心筋焼灼術後、6ヶ月以上ホルター心電図等による経過観察及び検討を行った後、病態が安定している者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、治療内容を含む臨床経過、安静時心電図、ホルター心電図、心臓超音波検査等の検査結果を付して申請すること。

5-2
上記以外の2.不適合状態の者が国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、治療内容を含む臨床経過(血圧の推移等)、安静時心電図検査、運動負荷心電図検査、ホルター心電図検査、心臓超音波検査、必要に応じて核医学検査等を付して申請すること。

5-3
上記5-1及び5-2の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。

3-9 脈管障害

1.身体検査基準

航空業務に支障を来すおそれのある動脈疾患、静脈疾患又はリンパ系疾患が認められないこと。

2.不適合状態

2-1
動脈疾患
(1)末梢動脈閉塞性疾患
(2)動脈瘤又はその治療歴のあるもの
(3)レイノー症候群

2-2
静脈疾患
深部静脈血栓症

3.検査方法及び検査上の注意

3-1
動脈瘤の疑いがある場合は、画像検査等により慎重に診断すること。

3-2
間歇跛行を呈する場合は、末梢動脈閉塞性疾患に注意すること。

3-3
動脈硬化性の末梢動脈障害を認めた場合は、冠動脈及び頚動脈の病変に注意すること。

4.評価上の注意

上記2-1(1)及び(3)について、基礎疾患を認めず、治療の必要がなく、航空業務に支障を来すおそれがないと判断された場合は、適合とする。

5.備考

5-1
動脈瘤術後(グラフト置換術等)、十分な観察期間を経て経過良好な者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、手術記録や治療内容を含む臨床経過、画像所見、凝固系を含む血液検査等を付して申請すること。

5-2
脈管障害に対して治療後又は治療中で、経過良好な者が、国土交通大臣の判定を受けようとする場合は、治療内容を含む臨床経過、凝固系を含む血液検査等を付して申請すること。

5-3
上記5-1及び5-2の者のうち、十分な観察期間を経て経過良好であって、病態等が進行しないと認められるものについては、国土交通大臣の指示により、以後指定医で適合とすることを許可される。